コロナウイルスの影響でイタリアがEUを離脱?EUの景気回復は大幅に遅れる可能性

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皆さんこんにちは。

日本では連日、新型コロナウイルス感染拡大の報道が続いていますが、欧米では感染拡大のピークは過ぎたように感じます。

しかし、感染による人的被害が収まっても、経済的な影響は続きます。

今回は、現在EUが抱えている経済問題と、今後、EUが崩壊する可能性について考察していきたいと思います。

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マーストリヒト条約によりイタリアはEU離脱へ?財政政策・金融政策の足かせとなるEUは無用の長物化

イタリアはユーロ圏にいるせいで財政支援が行えない

新型コロナウイルスが引き起こしたパンデミックはその性格上、財政政策により、被害を受けた企業や個人への支援を行う必要があります。

しかし、マーストリヒト条約やその後に結ばれた「安定と成長の財政協定」により、EUに加盟している各国は、独自で財政政策を行う事ができない体制になっています。

マーストリヒト条約は、1991年に調印された条約で、欧州連合条約とも呼ばれます。

主に政治や経済について、EU参加国のつながりを強化する目的で調印されましたが、その中でも、EUの通貨であるユーロへ通貨統合を行う際の参加基準を明確化していることでも有名です(ユーロ加盟国は財政赤字を対GDP比で3%以内におさめること等)。

また、通貨統合が行われた後は、通貨の安定を保つために、各国は独自で金融政策を実施できなくなりました。

つまり、各国が独自で莫大な財政支出を伴う財政政策を行えば、財政的に余裕がない国は財政赤字を拡大させる結果になる可能性があり、財政赤字が拡大した結果、金利上昇やインフレが起こると、その国から他のユーロ圏の国にその影響が波及することを防がなければならないのです。

なお、この協定下でも、財政的に余裕があるドイツは、7,500億ユーロという大規模な支援策を打ち出し、必要があれば随時増額するとしていますが、その他のほとんどの国では、この協定下で財政の自由はほとんどなく、それは新型コロナウイルスで甚大な被害を受けたイタリアやスペインも同様です。

 

ECB(欧州中央銀行)の活動も制限される

過去の記事で経済危機の際には、政府による財政政策と中央銀行による金融政策の双方が必要になると解説しました。

詳しくは下記の記事をご覧ください。

現在、日本やアメリカ等の経済大国では、各国の中央銀行が、政府の巨額な財政支出を積極的な金融緩和で支援しています。

しかし、EUにおける中央銀行の役割を果たすECB(欧州中央銀行)が同様の対応を行うには、各国との調整が必要であり、かなりの政治力と時間が必要となりますので、機動的な対応を行うことは困難と言えます。

 

イタリアとスペインの国民感情は反EUへ

上記のように、財政的に余裕がない国は、経済危機に対しても、自国独自の財政政策は行えません。

今回の新型コロナウイルスによる不況では、イタリアやスペインが挙げられますが、そのような国の国民(特にイタリア)は「EUが自国の経済の崩壊を黙殺している」と感じ、反発を生んでいます。

つまり、イタリア国民からしてみたら、イタリアリラのような自国の通貨さえ持っていれば、独自の財政政策や金融政策が行えたはずなのに、EUに加盟しているが故に経済の崩壊に全く対応できない状況だと移っているのです。

 

コロナ債発行の構想の頓挫

しかし、自国の国民を救いたいイタリアが全く行動を起こしていないかというとそうではありません。

EUに加盟することで全く身動きが取れなくなったイタリアが打ち出した手は、フランスやスペイン等のコロナウイルスによる被害が大きい国8カ国と協調して、新たなコロナ債を共同で発行することで必要な財政出動を可能にすることでした。

しかし、この案は財政的に余裕があるドイツとオランダの反対によって却下されます。

この決定に対し、国家と国民が存続の危機に直面している状況で、マクロ経済が全く機能しえないのはおかしいということで、イタリアではさらに反EUの機運が高まっています。

しかも、コロナ債の提案は経済学的にも人道的にもイタリアが正しいとみられているにも関わらず、その主張が通らないのですから、この反応は当然と言えます。

 

EUの制度上の大きな欠陥が明らかに

結果として、コロナ債は発行されませんでしたが、イタリアにはESM(欧州安定メカニズム)により250億ユーロの金融支援が行われました。

ESMとは、正式名称をEuropean Stability Mechanismといい、欧州の金融行政の安定を図るための金融支援機関です。

ユーロを導入する国の出資金や債券で資金調達を行い、EU加盟国の銀行に金融支援を行うことを主業としており、欧州版の国際通貨基金(IMF)とも呼ばれています。

しかし、今回イタリアに行われた250億ユーロの金融支援では、同国が被った被害に対し、全く不十分であり、問題の根本的な解決には至っていません。

しかも、この問題はイタリア以外の国も抱えているため、ESMが支出する債権は多額となる事が想定されます。

すると、結果として、ESMが発行する債権は、イタリアが当初提案したコロナ債と同義になってしまうのです。

今回の新型コロナウイルスによる経済危機は、図らずも、EU圏の経済危機に対する脆さ、そして制度上の大きな欠陥を露呈する形となり、今後に課題を残すことになったのです。

 

財政政策が柔軟に使えないEU圏の景気回復は大幅に遅れる

上記のような背景から、EUは10年前のユーロ危機と同様に日本やアメリカ、同じヨーロッパのイギリスに比べ景気の回復は大幅に遅れる可能性が非常に高くなります。

しかし、ユーロ危機は、EUが発足して初めて財政政策が必要とされたのに対し、今回の経済危機は、ユーロ危機の反省が生かされるはずの局面だったにもかかわらず、マクロ経済政策最大の対策とも言える財政出動が行えないという欠陥が再び表面化しただけだったことから、この経済危機が去った際には、EUおよびユーロの必要性について議論が起きることは間違い無いと思います。

 

まとめ

今回のコロナウイルスが引き起こした経済危機は、EUという巨大な経済共同体が、崩壊する可能性を示唆した形となりました。

今後の、EUやユーロがどうなるのかは熱い議論が交わされることになると思いますが、少なくとも現在と変わらない形で存続することはないのでは無いでしょうか。

 

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