民法改正で事業融資に保証人が不要に?保証意思宣明公正証書とは?

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こんにちは。

2020年4月から民法の一部を改正する法律(以下、改正民法といいます。)が施行されます。あまり金融業界外では話題になっていませんが、実はローンや融資を行う側にとってはとても大きな変換点になるんです。

今回は、特に影響を受ける事業融資について、4月から何が変わるのか、融資を受けやすくなるのかといった疑問を解決していきたいと思います。

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民法改正で融資の何が変わるのか?

改正民法とは?

民法とは、人の生活や事業におけるルールを定めたものです。毎年、何かしらの法律が見直され改正されていますが、現行の民法は120年前の施行以来ほとんど改正されていません。今までは民法の解釈をめぐり、法学者等の専門家たちが話し合ったり、裁判の判例を用いたりしてカバーされてきましたが、実情に合っていない部分が多数ありました。

今回の民法改正では、その実情に合っていない部分や、明記されていない部分を明文化するために行われます。

 

今後の融資への影響は?連帯保証人は要らなくなる?

今回の記事では改正民法の中でも、事業融資に関係する部分に絞って解説しますが、最も影響を受けるのは、事業融資を受けるときに、経営者以外※の連帯保証人となる方がいる場合は保証意思宣明公正証書という書類の提出が必要になる点です。

※「経営者」とは、①債務者が法人の場合は、その法人の理事や取締役または議決権の過半数を有する方②債務者が個人の場合は、共同事業者または債務者の家族の方、を含みます。

 

そもそも保証意思宣明公正証書とは何か?

そもそも、公正証書という名前ですら聞いたことがある方は少ないと思います。公正証書とは何かというと、日本全国にある「公証役場」で法務大臣により任命された「公証人」により作成された公文書となります。公証人は全国に500名ほどがおり、元検察官や裁判官などの法律の専門家たちで構成されています。公正証書は公証人により、法的に問題がないか確認し、作成者の身元を調べてから作成されますので、非常に強い証明力を持ちます。ですので、作成後に裁判等で無効とされることがありません。

続いて、保証意思宣明公正証書とは何なのかというと、保証人予定者(以下、保証人とします。)の「私は保証の内容やリスクを理解し、保証人となる意思があります」といった意思表示を記載した公正証書です。

今までは事業融資を受ける際には保証契約書に記名押印するだけで契約が成立してしまっていましたが、保証意思宣明公正証書を作成することにより、保証人がリスクを再確認し、それでも保証をする意思があるかどうかを公証人がチェックすることになりますので、保証人が「融資額等の内容も理解せず保証契約を結び、債務者の返済不能により突然多額の借金返済義務を負った結果、生活が破綻する」といった事象を防ぐことができるようになりました。

 

保証意思宣明公正証書の作成方法は?

実際に保証意思宣明公正証書を作成する手順を保証人目線で説明します。

①債務者(借主)から保証人になってもらいたい旨の依頼を受ける

②債務者から保証する債務の内容の説明を受ける

債務者は保証人に保証する債務の金額や金利、期間等の詳細内容をしなければなりません。また、融資を行う予定の金融機関からは、保証人に連帯保証人のリスクや金融用語(保証極度額等)の説明が行われます。そして、保証人はその内容を理解した上で、保証意思宣明公正証書を作成する必要があります。

③保証人が公証役場へ連絡し、保証意思宣明公正証書作成を嘱託(依頼)する

公証役場は居住地の最寄りでなくても問題ありませんので、 公証役場一覧(日本公証人連合会HP) の中から行きやすい公証役場を選び連絡しましょう。この連絡の中で公証人と話し合って作成する日を決めますが、保証契約日の1ヶ月前以内に作成しなければ効力を発しませんので注意しましょう。保証契約日は金融機関に確認しておくとスムーズに作成日を決めることができます。

また、予め契約内容の詳細を公証役場に郵送するよう依頼されると思いますので、金融機関へ連絡し、公証役場へ送ってもらうようにしましょう。

④保証人が一人で公証役場に行き、保証意思宣明書を提出、保証意思の宣明を行う

保証人は基本的に一人で公証役場へ行き、保証意思宣明を行わなければなりません。金融機関職員に公証役場までついてきてもらうこともできますが、同席はできず、別室で待機してもらうことになります。

このときに行う必要があるのは、②で債務者や金融機関から説明を受けた内容を口授(法曹関係者は「くじゅ」といいます。口頭で説明するという意味です。)することです。最低でも「債務者、債権者(金融機関)、借入金額、利息・損害金利率等、保証の意思がある(債務者が返済できない時に代わりに返す意思がある)かどうか」程度の内容は説明できなければいけません。口授の際には保証内容を記載したメモ等を確認することは可能ですが、ただメモを読み上げるだけでは保証内容を理解しているとは判断されません。また、公証人から保証の内容や金融用語について質問される可能性もあります。

上記に記載した内容は一例ですが、最低限この程度の説明ができなければ、公証人に保証人としては適さないと判断されてしまい、作成してもらえない可能性があります。

また、保証意思宣明書はこちらの 日本公証人連合会ホームページ に書式がありますので、記入してもっていきます。

⑤公証人から保証意思宣明公正証書の正本と謄本をもらい、手数料を支払う

公証人に保証人として適すると判断されれば原本と正本が作成され、原本は公証役場に、正本は保証人に手交されます。金融機関からは謄本の提出を求められると思いますが、謄本の作成には手数料がかかります。

また、保証意思宣明公正証書は作成自体にも手数料がかかります。一通11,000円と高価ですが、上記③の通り、保証契約日の1ヶ月前以前の公正証書は効力を発さず、作り直す必要が出てしまいます。その場合は手数料ももう一通分発生しますので注意しましょう。

 

保証人に頼らない融資が増えるかも?

現在の事業融資は連帯保証人に頼った保全確保が主流です。その結果、経営に関与していないにもかかわらず、債務者の破産に伴い保証人も破産する等の弊害が出ました。

今回の民法改正で、保証人を設定するために必要な事務が煩雑化・厳格化されますので金融機関も保証人に頼らない審査方法を検討する必要が出てきます。その結果、事業融資でも保証人を不要とする金融機関が増えることが想定されます。

 

まとめ

今回は保証意思宣明公正証書の基本から作成方法、銀行のスタンスの変化を説明しました。

必ず押さえて欲しいことは、①事業融資を受ける際、経営に携わらない連帯保証人が必要な場合は作成しなければならない②保証人本人が公証役場で作成する必要がある③保証人は借入の内容や金融用語の知識を身につけてからでなければ作成してもらえない、の三点です。

事業融資を受ける予定がある方も、保証人に上記のような内容を説明することになると思いますので、基本的なことは押さえておきましょう。

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